遺伝医療/ゲノム医療の進展とともに歩んできた
認定遺伝カウンセラーの歴史

遺伝カウンセリングの誕生と発展

遺伝カウンセリングの概念は1940年代にアメリカで生まれました。
それまでヒトの遺伝学は優生学的な視点から扱われることが多かったのですが、あくまで遺伝カウンセリングは「優生学的な意味合いをもたないもの」として意味づけられていました。

1960年代には先天異常への関心が世界的に高まり、妊娠出産に関する相談ニーズが増加しました。
この頃(1969年)にアメリカで遺伝カウンセリング最初の研修プログラムが開設されました。

その後アメリカでは現代の遺伝カウンセリングの原型が作られていき、遺伝子診断にともなう心理的・社会的問題や倫理的課題に対応するための専門職として、1981年に初めて遺伝カウンセラーの資格認定が開始されました。

遺伝学の医療への広がりとゲノム元年

1990年代に入ると、分子遺伝学が急速に発展し、遺伝カウンセリングの対象分野は生殖領域から疾患の予防や治療にまで拡大していきました。

そして、2003年、ヒトゲノムプロジェクトの完了により、ヒトの遺伝情報が解読され、医学・医療は大きな転換点を迎えました。
この年は「ゲノム元年」とも呼ばれ、がんや希少疾患などの病態の理解が深まり、個別化医療の可能性が大きく広がる契機となりました。

日本における体制整備と教育の開始

このような世界的な流れを受けて、日本でも遺伝医療体制の整備に向けた動きが本格化します。
1998年には、厚生労働科学研究(主任研究者:古山順一)により遺伝医療システム構築を目指す研究班が発足し、2000年には、非医師による認定遺伝カウンセラーの養成と資格化についての研究が始まりました。

2002年には、大学院修士課程レベルでの専門職育成が適切とされ、同年、医師を対象とした「臨床遺伝専門医認定制度」が創設されました。
そして2003年、研究班で策定された到達目標とカリキュラムに基づき、信州大学大学院と北里大学大学院で、認定遺伝カウンセラー養成の専門修士課程が初めて開設されました。

資格認定と職業倫理の確立

この養成体制の整備を受け、2005年には日本人類遺伝学会と日本遺伝カウンセリング学会の共同により、認定遺伝カウンセラー資格認定制度委員会が発足しました。
同年、第1回認定試験が実施され、日本で初めて5名の認定遺伝カウンセラーが誕生しました。

その後も制度整備は進み、2010年には「日本認定遺伝カウンセラー協会(JACGC)」が設立され、専門職団体としての基盤が築かれました。
さらに翌2011年には、職業倫理と責任を明文化した「倫理綱領」が策定され、認定遺伝カウンセラーの専門性と公共性が改めて明確になりました。

ゲノム医療と認定遺伝カウンセラーの未来

その後、次世代シーケンサーをはじめとする遺伝子解析技術の革新とともに、ゲノム情報の臨床応用が急速に進み、診療報酬やガイドラインといった制度面も整備されていきました。
そして2023年には、「良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律(ゲノム医療推進法)」が施行され、日本全体でゲノム医療の体制が制度的にも支えられる時代へと突入しています。

このような流れの中で、認定遺伝カウンセラーは、ゲノム医療を支える中核的な専門職としてその意義と期待がますます高まっています。
遺伝学的検査前後の情報提供と意思決定支援、心理社会的サポート、多職種連携によるチーム医療など、認定遺伝カウンセラーは医療現場の中で欠かせない存在として患者さんやご家族に寄り添う役割を果たしています。
今やアメリカでは認定遺伝カウンセラーは6,700名超、イギリスでは300名を越し、日本でも400名を超える認定遺伝カウンセラーが活動しています。

私たちはこれからも、科学と人と社会をつなぐ専門職として、ゲノム医療の発展とともに歩み続けていきます。

概要年表

1998年 厚生労働科学研究(主任研究者:古山順一)により、遺伝医療システム構築を目指す研究班が発足。
2000年 非医師による認定遺伝カウンセラーの養成と資格化に関する研究が始まる。
2002年 大学院修士課程レベルでの専門職育成が適切とされる。
医師向け「臨床遺伝専門医認定制度」創設。
2003年 信州大学大学院・北里大学大学院で、認定遺伝カウンセラー養成の専門修士課程が初開設。
2005年 日本人類遺伝学会と日本遺伝カウンセリング学会が共同で、認定遺伝カウンセラー資格認定制度委員会を発足。
第1回認定試験実施。初の認定遺伝カウンセラー5名が誕生。
2010年 認定遺伝カウンセラーの専門職団体「日本認定遺伝カウンセラー協会(JACGC)」が設立される。
2011年 「倫理綱領」策定。職業倫理と責任が明文化され、専門性と公共性が明確化。
2025年 日本認定遺伝カウンセラー協会が一般社団法人化。

 

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