遺伝カウンセリングの相談内容 TOPICS COVERED
遺伝カウンセリングの相談内容
染色体や遺伝子が関わる病気や体質にはさまざまなものがあり、遺伝カウンセリングで相談される内容は特定の診療科に限られません。
ここでは例として4つの領域を挙げ、遺伝カウンセリングで扱われる主な相談内容をご紹介します。
妊娠前・妊娠中
よくある相談内容
- 不妊や複数回の流産を経験し、遺伝的な要因が関係していないか気になっている
- 自分や家族の病気が、子どもに遺伝しないか心配している
- 上のお子さんに先天性の病気があり、次のお子さんも同じ病気になるのではと不安がある
- 出生前検査を受けたが、結果について詳しく説明を受けたい
- 妊婦健診で赤ちゃん(胎児)の病気が指摘され、精密検査や今後の見通しについて相談したい
- 着床前診断を考えているので、詳しい話を聞いてみたい
出生前検査に関する相談
ご相談内容は多岐にわたりますが、なかでも出生前検査に関するご質問は少なくありません。
出生前検査にはいくつかの種類があり、「何がわかるのか」「どのようなリスクがあるのか」「いつ受けるのか(妊娠週数)」といった点は検査によって異なります。
また、すべての先天的な病気を見つけられるわけではなく、検査には限界があることも大切なポイントです。
遺伝カウンセリングでは、以下の点について丁寧に説明しつつ、一緒に考えていきます。
- 検査で何がわかるのか、どういう意味を持つのか
- その検査が本当に自分にとって必要かどうか
- 検査結果を受けてどう対応していくか
中には、遺伝カウンセリングを受けたうえで「検査は受けない」という選択をされる方もいます。
どの選択肢も尊重されるものであり、納得して選ぶことが大切です。
ご家族へのサポート
お腹の赤ちゃんに病気があることが分かったご家族に対しては、診断を受け入れるまでの心の整理や、今後の見通しについての不安を共有しながら、必要なサポートを検討していきます。
さらに、小児科や他の医療従事者と連携することで、出産後も安心して支援が受けられるように体制を整えます。
子どもの先天性・遺伝性の病気
よくある相談内容
- 生まれた赤ちゃんに染色体の異常が見つかり、病気について詳しく知りたい
- 子どもに先天性の病気があり、その原因を知りたい
- 子どもにいくつかの特徴があり、「遺伝子の病気」の疑いがあると言われた。遺伝子検査について教えてほしい
- 子どもが遺伝性の病気と診断され、その病気や治療法について知りたい
こうしたご相談では、病気の診断や今後の見通しに加え、ご家族への影響や将来のことを含めて、さまざまな不安が共有されます。
遺伝カウンセリングでは、病気と遺伝子・染色体との関係について、医学的な内容もわかりやすく丁寧に説明しながら、ご家族の理解と納得を大切に進めていきます。
染色体検査や遺伝子検査を検討する場合
その検査が本当に役に立つのか、どのような情報が得られるのか、逆にどのような限界があるのかを一緒に考えていきます。
検査を受けた際には、小児科の主治医などと連携し、結果の内容とそこから得られる情報についてご家族全体で共有しながら、必要な支援や対応を整理していきます。
ご家族の他の方への影響がある場合にも、その点について丁寧に話し合います。
また、診断や検査結果を受け入れるまでには時間がかかることもあり、一度の相談で解決しないことも少なくありません。
そのため、必要に応じて何度かお話しする機会を設けながら、気持ちの整理や今後の準備を支援します。
成長に応じた継続的なサポート
病気のあるお子さんが成長していく過程で、自分の病気について理解すること、将来の健康管理を自分でできるようになること、結婚や出産などのライフイベントに向けて遺伝との関係を知っておくことも大切になります。
お子さんの発達段階や状況に応じて、ご家族とともに歩みながら、継続的な支援を行っています。
お子さま向けの説明資料
この資料は、認定遺伝カウンセラーや遺伝子検査について、やさしくわかりやすくまとめたものです。
ご家族や医療従事者の方が、お子さんにお話しされる場面を想定して作成しています。
ごきょうだいに説明する際にも、ぜひご活用ください。
目次
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「遺伝のきほん編」
認定遺伝カウンセラーの紹介をはじめ、染色体・遺伝子・細胞がどのように関係しているかを、やさしく説明しています。
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「遺伝のけんさ編」
遺伝子検査や遺伝カウンセリングを説明しています。
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「大人になっていくみんなに知っていてほしいこと編」
少し大きくなったお子さん(ご本人やごきょうだい)向けに、将来にそなえて遺伝カウンセリングを活用してほしい場面や考え方をお伝えします。
遺伝子検査や遺伝カウンセリングについて、どのようなことをするのか、どのような時に役立つのかを紹介しています。
サンプル画像
遺伝性のがん
よくある相談内容
- 血縁者にがんになった人が複数いて、自分も同じがんになった。遺伝性なのか知りたい
- 薬を選ぶための遺伝子検査の結果説明の時に、遺伝性のがんの疑いがあると言われた。遺伝性かどうか調べる検査を受けた方がいいのか知りたい
- 遺伝性のがんと診断されたが、子どもやきょうだいに伝えるべきか、伝えるならいつ・どのように伝えればよいか悩んでいる
- 血縁者が遺伝性のがんと診断された。自分はこれまでがんになったことはないが、検査を受けるべきか相談したい
遺伝性のがんについて
日本では、約2人に1人が生涯のうちに何らかのがんにかかるといわれていますが、多くのがんは遺伝とは関係ありません。
一方で、すべてのがんのうち約5-10%は「遺伝性腫瘍症候群(遺伝性のがん)」と呼ばれ、遺伝子の変化ががんの原因に関わっていることがあります。
遺伝性のがんにはいくつかのタイプがあり、原因となる遺伝子や、がんが起こりやすい臓器、がんのなりやすさ(リスク)は異なります。
近年はがんの治療法を選ぶための遺伝子検査が普及してきており、遺伝性のがんと診断されることで、今後のがんのリスクを見据えた治療や予防の選択肢が広がる場合もあります。
ご家族からのご相談もサポート
遺伝カウンセリングでは、がんを発症されたのご本人だけでなく、まだその時点でがんを発症していないご家族からのご相談にも対応しています。
これまでの経緯や家族歴を詳しくうかがい、医師と連携して遺伝性のがんの可能性を評価します。
そのうえで、関連するがんを発症する可能性や、早期発見・発症予防のための方法、遺伝子検査の内容や受けるタイミングについてもご説明します。
検査を受けるかどうかを一緒に考えるとともに、検査の結果がご家族にどのような影響をもたらす可能性があるかについても丁寧に話し合います。
大人の遺伝性の病気・難病
よくある相談内容
- 症状から遺伝性の難病が疑われており、確定診断のための遺伝子検査について知りたい
- 遺伝性の難病と診断され、家族にどう伝えるべきか悩んでいる
- 親が遺伝性の難病と診断され、自分も将来同じ病気になるのか気になっている
- 遺伝性の病気の家族歴があるが、自分には症状がなく、遺伝子検査を受けるべきか相談したい
遺伝性の病気の中には、成人後に発症し、進行していくものもあり、難病に指定されているものもあります。
病気そのものだけでなく、今後の生活、家族への影響、遺伝の可能性など、抱えうる課題は多岐にわたります。
遺伝カウンセリングでの支援
遺伝カウンセリングでは、病気の概要や原因遺伝子、遺伝子検査の目的や限界について丁寧にご説明し、遺伝子検査を受けるべきかどうかなどについてご本人やご家族と一緒に考えていきます。
特に昨今のゲノム医療の発展により、遺伝子検査とひもづいた予防策や治療薬が出てきており、最新の医学情報をもとに対応を考えることが重要です。
将来に向けたサポート
診断が確定している方だけでなく、症状がないご家族からのご相談にも対応しています。
特に、症状のない段階で行う遺伝子検査(発症前遺伝子検査)については、検査を受けることのメリット・デメリット、検査結果が本人やご家族に与える心理的・社会的影響、将来への備えなど、多角的な視点で話し合います。
必要であれば、複数回にわたる相談や、他職種との連携を通じた支援を継続していきます。
また、病気とともに生きる方にとって、自身の病気を理解し、将来の生活を見据えた準備をしていくことも重要です。
遺伝カウンセリングは、不安や悩みを整理する場であるとともに、そのような準備を進めていく場でもあります。
※本ページ中の「遺伝子検査」は、生まれもった遺伝情報を調べる遺伝学的検査のことを指しています。